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映画「桐島、部活やめるってよ」レビュー

「俺たちはこの世界で生きていかなければならないのだから」
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こんなシンプルな台詞がここまで響くとは!

洋画洋画と続いた当ブログ久々の邦画レビュー。
正直劇場で鬱々とした話や頑張ってる自分大好き話、漫画原作の邦画なんて高い金払って見る気が起きないなぁと思い始めてた矢先に飛び込んできた邦画「桐島、部活やめるってよ」
ダークナイト・ライジングを観賞したその日に映画でポスターを見て「神木隆之介君でっかくなったなー」程度の印象しか無かったので見る直前まで存在を忘れてた所、「めちゃくちゃ面白い」と騒ぐ知人が続出。こりゃ確認しないと駄目だと思い映画館に足を運んでみると想像とは全く別物の映画な上に確かに想像を超える面白さだった!

と、いう出来だったものの気軽に話し合える友人の殆どは見ておらず、崖生でも9割方興味の無い素振りをしていたのでここにレビューを書いてこの映画に対する熱を吐き出したいと思います。最強の二人とはうってかわって「レビューは書きたかったけどなかなか文字に起こせなかった」もので文章が不出来になってしまったのはご愛嬌。ちなみに原作は未読なので、それが関わってくる言及は間違ってる事もあるかも。

例によってネタバレ全開!
続きはmore...から。

この映画に桐島は殆ど登場しない!!!

前情報を仕入れていなかった自分にとっては一番大きな衝撃だった。
と、いうのもポスターに写ってる神木隆之介さんは「桐島」ではなく冴えない映画部員である「前田」というキャラクターであり、この映画の"主演"ではあるが"主人公"ではないという扱い。
青春映画というカテゴリーもつけられる本作であるが、わかりやすく、王道で、といった共感を得やすい学園ドラマは描かず、目を背けたい現実的な高校での人間関係を追っていく事で視聴者に様々な思いを抱かせる事に成功している。ターゲットが既に高校生活という青春が終わっている「大人」なのは間違い無いが、現在その渦中にいる人達も「人事ではない」のがまた面白い。

とりあえず、タイトル通り「桐島」が部活を辞めた、という事件から物語は始まっていく。同じ金曜日を各キャラの視点で何度も流していき、事件による各々の変化を丁寧に描写する等珍しい手法を使ってきている。主な登場人物は一見仲が良さそうに見えるが、心の奥の方では繋がっていなさそうな女子4人組。学生ヒエラルキーの上位にはいるが特に目標はない、この映画の真の主人公「菊池宏樹」と、その仲間の3人組。好きな男子に振り向いて欲しいが為に屋上でサックスを吹き続ける女子。そして、顧問のせいで煮え切らない毎日を過ごしていた映画部の前田。
他のキャラクターもいるが、その殆どもこの「桐島」の一件に否応なく巻き込まれ、日常が変わってしまう。キャプテンでエースであった桐島を失ったバレー部は勿論、彼の彼女や同級生は連絡を取ろうと電話やメールを飛ばす。だが桐島は最後まで彼らの呼びかけには一切応じない。
対して、そんな騒動の蚊帳の外にいる「前田」は顧問の意見は無視して自分の好きな「ゾンビ映画」を撮ろうと仲間達と日々奮闘していた。ちょっとした事で周囲には笑われ、ちょっと気になったあの子が実は他の男子と付き合っていたり、ロケ地から動かない女子がいるせいでスムーズに撮影できなかったりとドラマは多々あるものの、表情は大体満足気だ。

そして映画終盤、桐島が学校の屋上にいるという情報を聞きつけ彼らは駆け足で現場に向かう。だが、そこで彼らが見たものはゾンビ映画のクライマックスを撮る「前田」達の姿であった。自分達の望んだ光景が見れず、映画の小道具に八つ当たりをするバレー部男子に対して憤りを感じた前田は最終的にゾンビに扮した映画部部員達を使い「映画の中」で彼らを食いちぎってしまった。結局、小道具を蹴飛ばした件については有耶無耶になってしまい、ゾンビ相手に馬鹿馬鹿しくなったのか、桐島を追う彼らも屋上からは去ってしまったが、ただ一人思う所があって屋上に戻ろうとした「菊池宏樹」は前田が彼の映画の登場人物にこう台詞を言わせようとするのを目撃する。
「それでも俺たちはこの世界で生きていかなければならないのだから」
ややあって「菊池宏樹」の視点で再び最後の1日を描いて映画は幕を閉じた。


さて、あらすじが長くなってしまったが、こんなストレートな内容で人によって感想が変わる映画も珍しいと感じた。
面白い・つまらないという事ではなく「自分がどの立場にいたか」で、この映画から受ける感情が全く変わってくるのだ。例えば「それでも俺達はこの世界で生きていかなければならないのだから」という台詞にしても、自分は非常に前向きで情熱的な台詞に思えたのだが、劇中の菊池達のような高校時代を送ってきた人達にとっては、残酷な一言に聞こえるのかもしれない。何故ならこの映画の桐島とは彼らの青春そのものとして扱われていて、彼がいるだけで能動的に動かずとも、部活や恋愛、遊びというものが色濃く見えていたのだろう。だが、拠り所を失った彼らはその事態を受け入れられず、新しい環境を構築しようともせずにその拠り所を再び取り戻そうと歩んでしまう。そしてその対比として置かれている「前田」や「菊池宏樹」の先輩であり野球部のキャプテンは既に自分を持っており、作中で歩み方のブレが無い事から一層強い人物として描かれている事で彼らの弱さも際立ってしまっている。好きな事を自分で見つけてやれてる人達に比べ、学校でのステータスを除いた自分は「空っぽ」なんじゃないかと感じてしまった「菊池宏樹」が最後に桐島に電話をかけつつも練習している野球部を眺めているシーンは非常に悲しげで、劇的な変化であった。

そして、この映画は舞台が「学校」ではあるものの表現している世界はそこに留まっていない。本当に学園を事細かに描いて描写していくのであれば場を宥める「お調子者」や「ヤンキー」。それと前田達とは違うタイプのヒエラルキー下層の人間も出すべきだ。それをしなかったのは本作がヒエラルキーとは関係の無い人間の強さ弱さを表現する事に焦点を絞っており「青春時代は終わっていますし取り戻せませんが、今の貴方はどうでしょうか」という問いかけに力を入れているからだろう。「学生時代は良かった」という台詞は珍しく無いどころか、自分の年齢でも既に耳に入り始める台詞になってしまったが、そんな言葉を吐く彼らはまんま「菊池宏樹」達の様だ。物語の幕が閉じた後彼らが「桐島がいた頃は良かった」とぼやいてる姿が容易に想像できる。

また、桐島が彼らの元を去っていったのも作中の噂と同様に原作の作者や監督が考える「上手い青春との付き合い方ができなかったから」とも言える。勿論、「菊池宏樹」達の様な学生時代を送っていると良くない!という単純な話ではないのでそこを素直に受け取ってしまうと非常にネガティブな主張の映画になってしまう。彼らと同じ雰囲気の同級生達で自分より遥かに真面目で、充実した毎日を送っている奴なんて普通に存在している。(もしかしたらそいつは「桐島」なのかもしれないけど)
スクリーンに映っている彼らは見る人の立場によって「忌み嫌うもの」であったり「自分を持てない弱さ」であったり「直すべき欠点」に変化する様な自身に内包する様々な負の感情の体現者として描かれているだけなのだ。なので最終的に彼らは弱い存在として見える訳で、彼らがゾンビに食われた事で「自分の弱い部分」が解消されたと錯覚するからカタルシスが生まれるのだろう。


今年、偶然にも高校で映画を教える企画に参加していたのでスクリーン越しと現実の二つを俯瞰視点から比べる事ができたのは幸いだった。「自分には何ができるかわからないけど何がしたいかは分かる」という生徒に「できる」を与えた結果、最初は2人だった部員が最終的には9人に増え、笑顔とやる気が絶えない半年を彼らは過ごせていた。対して、その撮影した映画の上映中に平気でお喋りをしたり席を立ったりする「菊池予備軍」もいた。恐らく一回しか見れないであろうものにまともに目を向けず、なんとなく存在する青春に向かっていくのだろう。能動的に動いて得た青春の方が非常に輝かしいというのに、もったいないと思ってしまう自分がいた。
だが、恐らく高校生活でそれらに気付く人は少ない。一緒に映画を撮った彼らも本当の所まだ気付いていないのかもしれない。自分だって高校時代はそれに気づいてるつもりで全然気付いていなかった。この映画を自分より上の座席で見ていた女子高生達は「ちょっとよくわからなかった」と、言っていた。学生時代という何もしなくても自然に降ってきた「青春」はいずれ失ってしまうし戻る事もない。それでも現在、自分の強さ・弱さを見つけていようが無かろうが、克服していようがいまいがとにかく今は「この世界で生きていかなければならない」のだろう。テーマが非常に分かりやすく、表現もどストレートな映画でここまで頭を捻る事になるとは思わなかった。


と、なんとかレビューが纏まったものの今までで一番書くのに時間がかかったレビューかもしれない。
本当なら当時のあんだーそんとは逆の立場にいた本作の真の主人公「菊池」についてもっと言及した方が良いのだけれどこの映画における「前田」の存在と平行して紹介すると上手く文章が纏まらなかったので彼とその関係者のドラマについては是非本作を見て確認して欲しい。とにかくあの上映時間で一人一人が良く描けていて、こんな中途半端な映画好きでは筆(キーボード)がおっつかないぐらいのボリュームが感じられた。それと以前、どこかにぼそっと「面白いとか燃えるとかかっこいいとかつまらないの一言だけで作品を語るのはもったいなくて嫌だ」と書いたのだけど桐島は見た人の殆どがその感情を生み出した理由について頭を悩ませる、個人的に良質な作品の証拠として挙げられる要素がこれにはある。そして、何度も書くけど見る人によって喜劇にも悲劇にも思える「桐島、部活やめるってよ」は色んな人に見てもらいたい映画であり語り合いたい映画にもなった。とにかく、必見の一本です。
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theme : 日本映画
genre : 映画

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